【中国旅行】世界遺産『福建の土楼』、数百年続く集合団地、ある土楼では100人以上が生活中です

中国

マニアックな、交通の便の良くない、世界遺産を見に行く旅はいかがでしょうか。少し知名度は落ちる、だからこそチェックしておきたい、中国の世界遺産についてです。場所は、台湾のちょうど対岸のあたり、福建省廈門から車で3時間半の山岳地帯です。複数の見どころが、1か所に集まるお勧めのコースを周ってきましたので是非ご覧ください。そこには、『平等』で素朴な『共同生活』の田舎が広がっておりました。

知るとより楽しくなること

世界遺産『福建土楼』をご存知でしょうか。中国福建省の、海から少し入った山岳地帯にある独特な建築物です。衛星で見た際に、軍事施設や核施設が大量に作られていると、誤解を与えたとされる建築群です。では、なぜ軍事施設に間違わられてしまったのでしょうか。

形は円形や長方形もあり、土壁と木で組み立てられています。時には、城壁のような壁の中に村を築いているとも表現されています。軍事施設と言われるのは、その形だけでなく、規模が大きいことにもよります。12世紀以降建築され、3階建てから5階建てまであり、大きなものでは80世帯、数百人が生活している、まさに大型団地です。

歴史的には、強固な建物で、集団生活をすることで、外敵からの攻撃にも耐えられるような機能を持たせていたため、要塞でもありました。土壁の厚さが180㎝以上ということもあり、簡単には攻撃できません。

世界遺産登録のされたわけ

2008年、生活と防衛を集団で行う組織の、特徴的な伝統的建築と機能の例として、またその環境と調和したありかたに関して優れた点が認められ、『福建の土楼』として、ユネスコ世界遺産に登録されました。

実は、福建省には2万を超える土楼があると言われ、そのうち3千程度を福建の土楼と定義されています。客家(漢民族で、北方より南下し、そのうちの一部が福建省に居住した移住民。さらに南下したり、華僑として海外へ渡ったりした客家も多い)が、先住民からの攻撃を防ぐために、集団で防衛した歴史もあり、福建の土楼とされているのは、客家が生活し、守ってきた土楼を指しています。

世界遺産に登録された主な土楼は、田螺坑土楼群、初渓土楼群、高北土楼群など46を数えます。

田螺坑土楼群

3階建ての円形と四角形の5つの建物が集まる、有名な土楼群です。場所は、福建省南東部、田螺坑村にあります。四角形の建物を中心に、4つの円形で囲まれる姿を、『四菜一湯』で構成されているとして、知られています。火災などもあり、現在は1900年代に建築された建物が中心です。四角形の建物、歩雲楼は、各階に26部屋あり、階段が4か所で構成されています。

高台に展望台があり、全景をきれいに眺めることができます。棚田の美しさも知られており、訪れた際には是非高台から一望することをお勧めします。

下から眺めた『四菜一湯』です。

土楼文化の凄み、それは『対等』

土楼は、全ての部屋が同じ大きさ、同じ材質等級、同じ内装で作られており、豪華な部屋や、権力を示す特別な部屋などもありませんでした。一族が、地階から上階までを縦に使用するため、高層階と下層階による差異も生じない、究極の対等な共同生活の場となっていました。

井戸や洗面や風呂、倉庫など、共同で使用する場所は全て共有、また、周辺の農地も共同で耕し、収穫後は平等に分けて暮らしていました。それが、1960年代まで続いていたのです。

現在は、快適な住宅を購入し土楼を離れる住民もいますし、観光客向けの店舗などで、土楼の1階部分を利用するケースも増えたため、その体系は崩れたかもしれませんが、未だに世界遺産の建物内で、多くの住民が日常生活を送っています。

裕昌楼

田螺坑土楼群より2キロ程離れた場所に、世界遺産の目玉のひとつ、裕昌楼があります。1308年、リュウ家一族により建てられた、5階建ての大型土楼です。

建材の寸法にミスがあり、支柱が水平ではなく、ジグザグになっており、東方向に倒れ、西方向へ歪むことから、「東倒西歪楼」とも呼ばれています。それにも関わらず、700年間も戦や自然災害に耐えて現在の姿を保つ、貴重な必見の建物です。

裕昌楼に向かう入口に、国家級観光地、「中華第一奇楼、東歪西斜」と表現されています。

土楼に向かう途中です。中国人を中心とした観光客が多く、出店もありました。外国人にはあまり会いませんでした。

目的の土楼、裕昌楼が見えてきました。「天下第一楼」と掲げられています。

まさに要塞の様ですね。

裕昌楼の内側に入りました。直径36mの5階建て、非常に大きいです。

斜めの柱もあり、絶妙なバランスを保っています。

1階を売店にし、上層階で暮らしています。

各階に50部屋、全体では200部屋を超える巨大さです。

1階のお茶屋さんです。

1階の中心部の井戸です。

石畳で、排水溝もありました。外部と遮断しても、土楼の中で守りを固められる工夫が随所にあります。

その先の土楼へ

裕昌楼より川沿いを北側に歩きます。のどかな田舎道です。

次なる見どころまで、4キロ近い散策になります。

ところどころで、土壁の古い集落もありました。

途中、あまり観光客のいない四角い土楼を覗きました。

規模は大きくない、コンパクトなタイプです。

裕徳楼

4階建て部分と2階建て部分のある、特徴的な土楼、『裕徳楼』です。

裕昌楼は大きかったですが、こちらはコンパクトです。

4階建ての住居部分です。

段差付きの円形土楼です。

川の対岸にある徳遠堂へ

裕徳楼を出て、更に北に進みます。次の目的地までは10分ほど。

独特な形の橋を渡ります。

橋の上より、農村地帯の川です。水もきれいでした。

路地に入り、丘の上へ。

少し高い場所へ登ってきました。

徳遠堂という、姓が張家のお寺です。

石龍旗という花崗岩の彫刻です。23本あり、これは中国で最多の数のお寺です。

周囲の棚田と調和し、美しい景観でした。

後記

土楼は、廈門市内から離れた郊外に点在しています。今回のコースでは、現地到着後におよそ3時間ほどで歩いて回るルートです。なお、土楼までは3~4時間かかりますので、個人で車などをチャーターする際には、ほぼ1日で予約する必要があり、コストがかかります。様々なツアーもありますので、それらを利用するのが良いかもしれません。

今回、廈門市内から、土楼までの間の土産物店兼パーキングエリアでトイレを使用しましたが、ほぼ外と変わらないような場所でした(というか、壁が崩れ、原っぱのような…)。良い意味で、多くの外国人が訪れる有名な観光地というよりは、中国国内で中国人が訪れている田舎の感がありました。快適で清潔な環境を求めるとギャップもありますので、ご注意を。個人的には、のどかな中国の農村を感じることのできる、非常にお勧めのエリアでした。

今後も、実体験に基づく、中国旅行記を発信します。旅の参考になれば何よりです。

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